ブラボー君のご乱行
1982年頃の話だ。夕食も終わり夜のとばりは完全に街を闇に包み、多くの人が眠りにつこうとしたころ、2mFMの呼び出し周波数で高らかに声が鳴り響く。
「オマンコ!」
ほとんど毎日のように、この一言がとどろく。
この声の主は僕と仲良しハムで現役変態高校生のブラボー君。ブラボー君は高校2年生。
もちろん童貞だけど、成長と共に自然の摂理で性欲だけは異常にふくらんでいる。
彼の場合、性欲を抑えられなくなると呼び出し周波数でその言葉を叫ぶという、なんとも妙な欲求不満解消法を採っていた。
「オマンコ!!」
静かだった呼び出し周波数にその声がとどろくと、「またやってるよ」と、知ってる人は苦笑していた。
ある時などは僕と他愛のない話題で交信中に、ブラボー君はこんな事を言い出した。
「あのー、そろそろもよおしてきましたので、すっきりしてきます」
そういうと彼は無言になり、僕もこっそり呼び出し周波数に移る。すると、声高らかに彼の声が響くのだ。
「オマンコ~!!」
オーバーパワーを憎み、QSOマナーにうるさいマジメ高校生のブラボー君も、この雄叫びだけはやめられないようであった。
就職して7エリアから1エリアに帰ってきたら、430MHzのFM呼び出し周波数に「シコシコマン」という人物が毎晩のように出ていた。
シコシコマンは呼び出しチャンネルでただただ「シコシコシコシコ」と言い続けるだけの奇妙な奴だった。
しかし、ぼくはシコシコマンが登場するたびに、ブラボー君を思い出していた。
ブラボーも今は50代。まさかもう、メインチャンネルで叫んではいないだろう。
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